Think Like Talking.

趣味や子育て、ゆるい生活をつづる備忘録

星座を睫毛に引っかけて

「星座を睫毛に引っかけて」を聴いて真面目に子供との時間を思う。


星座をまつ毛に引っ掛けて  キリンジ

 タイトルはキリンジから。先に言うと、考察とかではないためそれを期待した方は回れ右をお勧めする。久々に乗った地下鉄の中で聞いて、グッときて下向いたままでしばらく動けず。 

 歌詞はこういうサイトを参考にしてもらうとして。

星座を睫毛に引っかけて キリンジ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

 子供が生まれる前から、こういう家族を表現したような歌がいつからか刺さるようになって。子供が生まれて手探りで父親としてあろうとあがいていると、この子にとってどういう父親であるべきかとか、何をこの子に残して、教えてやらなきゃならないかとか、そういうことを考えるようになった。 

 歌詞を見ながら聞いてもらえば、子供の成長といつか離れていく寂しさ、何を与えてやれるかといったいろんな感情が見えてくるけど、自分は何だろうなあ、やっぱり「ぬくもりの他には なにもやれないけど」というところかな。どんなに金があって、いろんな教育やすばらしい概念で子育てをしている人もすごいと思うけど、たまに見せる息子の寂しさを我慢している顔を見てしまうと、いつかはこうして親を求めてくれる時期に終わりが来てしまうことを考えてしまう。きっとその時に子供の支えになるものは、身に着けた知識や技術・教養ももちろんなんだけど、大切にされた記憶がなければきっと自分を認めてやれなくて揺らいでしまうんだろうなと。 

 曲の最後の「希望という帆を揚げた船に攫われるのだろう」という一節、自分で選んだ何かがきっと大切なものだと信じて、自分たちもそうして大人になろうとしてきたのと同じように、この子もそうしたものをよりどころにいつか離れていくんだろうなと思ったときに、不覚にも駄々泣きしてしまった。

 得てして心地よい耳障りの言葉や、裏にある汚いものを覆い隠した題目があふれる中で、自分の子供の世代がそれに触れる頃、それはどんな意味をもつのだろうかとか、今よりも少しでも救いの残っている世界であってほしいとか、それをいつまで見守ってやれるだろうかとか、そんなことを考えてしまった。 

 子供の人生の最後まで親が見てやれることはほとんどない。自分の親も言うが、親が子供の最後を見ることほど親不孝なことはない。どんな人生になるか、終わりがどんな形かは誰にもわかることではない。ただ、願わくば穏やかに、人生を全うして欲しい。そんなことを思うようになった。

 

 もっと言うと、音楽で感じるものが大きく変わってきた。

 例えば数年前、「僕が死のうと思ったのは」という曲でやはり駄々泣きしたことがあったのだが、これは自分の主観としての生きづらさや、前を向くための希望を拾い上げる「自分のための」涙だった。

 これが、今回の曲のように大切な誰か、例えば息子や家族の幸せを願うような曲が唐突に刺さってくるような。よく「祈ります」という言葉があるけれども、この「祈り」がどんな強さで、何を思うのかが、より鮮明になるというか。その切実さというか。

 

 そこから奇妙な感情が最近出てきていたり。ここからおかしい話になるけども。

 

 自分には90代も半ばの祖母が健在で。いろいろと若いころのようには動けなくなってきているし、余生という言葉が当てはまる人生の時期なんだけど。その祖母に対して、なんとか安らかに過ごしてほしいという気持ちになるのだ。その字面だけであれば、きっと同じように思う人が多いと思うけど、その先に「祖母を生んだ曾祖母が、娘である祖母に対して、自分が息子に願ったように、幸せな中で過ごしてほしいといつか祈ったことがきっとあって、それをかなえてあげたい」という、ややこしいことを思うようになったのだ。きっとそれは、人が伝え続けてきたことであって、いろんな事情があるにせよ大半の人が受けてきた祈りで、自分の親にも親がいて、そう思うと何をもって幸せなんだろうと考えることが多くなった。 

 自分の親にとっては、子供である自分たちが、辛いことはあれど笑って過ごす時間が長いことと、それをできる限り見せ続けることが幸せなんじゃないかと。自分たちが、子供の笑顔を見て幸せを感じられるのなら、きっとそれはいくつになっても見ていたいことだから。

 

 とても大きな、でも小さな範囲の話。すべてが完璧なことなんてありえないんだけど、そういうことを考えていると、自分が幸せでなければ誰も幸せにできないというどこかで聞いた言葉は真言なんじゃないかと思えてくる。

 

 なーんてことをつらつらと考えながら、嫁さんの検査待ち。嫁さんの親御さんのためにも、嫁が幸せと思える人生を過ごさせてやりたいなあ。きっとそうしてみんなが笑っている人生が、俺にとっても幸せだと信じて。

 

 オチはないけどとりあえず。