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One Last Kiss

Amazon Primeでシンエヴァを見た話。

 触れねばならんでしょうな。ネタバレは極力しない方向で、というかもともとそこまでエヴァの世界観には詳しくないので、ファンの方々にとっては炎上案件になりかねない表現があるかもしれん。その辺は「へぇ」とやり過ごしてくださいな。

旧手宮線

線路、まぁ10年前の旧手宮線ですが

 本当はテーマ的に「世界線の乗り換え」=「線路の複線」を隠喩していたはずなのでこれだと「別の選択肢」にはなりえないんだけどまぁそのへんは雰囲気ということで。

 8/13からAmazon Primeで独占配信となった「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」。去年の地上波一挙放送でやってた序・破・Qの流れで息子が見たい見たいとせがむため、初代のChromecastを引っ張り出してきてセットアップ、iPhoneからキャストしようと思ったがなぜかネットワーク上にChromecastを認識せず、頭に来てXperia 10Plusまで総動員(パソコンからのセットアップを受け付けないのでAndroidスマホを引っ張り出してきた)して結局Google homeの設定を全消去してようやくキャスト。

 

 そうして見始めたシンエヴァ。劇場公開のインプレッションは軒並み「いい終わり方」みたいな評価が多かったので、まぁ色々と回収されたんだろうなと。あらかたの内容はネタバレサイトや一般レビューの話を総合するとわかってしまっていたので、さあどう決着つけるのかなという視点で見る。

 嫁、息子は中盤=最終決戦初戦でアウト。嫁は集合体恐怖症も相まってもともと視聴には後ろ向き、息子は想像以上のグロ表現というか「怖い」ということで。まぁ楽しいロボット活劇ではないよと再三忠告していた親の言うことがようやくわかっただろ。

 

 さてようやく一人で集中して見られる。前半は人間活動、中盤は決戦、終盤は伏線回収という感じの構成。詳しい内容はもちろんバラす気はないんだけど、なんというか、相変わらずだなぁと。パイロットの女の子のそれらしいアングルやらお姿やら、まぁ女性経験が皆無もしくは少ない10代20代くらいの旺盛な男の子が夢想するような女の子の姿(オタクに限らん)がキャラクターの姿を借りて展開されるのだが、それここで要るか? というのがちょっと鼻につく。作り手のリビドー噴出という側面はあるんだろうけど、これがあるからエヴァファンの7割位が「その手の女の子」好きに見られちゃうんじゃないかなあと余計なお世話を言ってみる。あ、そうは言いつつもマリ好きですよ。

 

 そんな横道の考えを出す程度に、目まぐるしく展開する話。一つの本筋を追うというか、広げすぎた風呂敷をどう回収するかという作業に走っているのか、多分ここが製作期間の大半を消費したり一度ガラッと作り直したりしたんだろうなという苦労の跡を偲んでみる。

 要は「親子の確執と葛藤を見せたい」のか「壮大な世界観の中で人類の取るべき道を考えさせたい」のか「活劇としての人造人間のこの物語を特撮で表現するには大変だからアニメでやってみた」のか「女の子がピッタリしたスーツとか裸で動き回るのを大手を振って見せたい」のか、どれなんだいと。

 エヴァファンの神経を逆撫でる気はないんだけど、思わせぶりな単語や設定を山程積み重ねてさあ表現したかったテーマって何? と考えるとどうも俺の知識が追いついていないのもあるんだけど「...何?」と詰まってしまう。

 

 とはいえこれが、何から何までを劇中の「ストーリーテラー」に語らせるのではなく最低限の情報を提供して見る側に想像させる、ということ自体が監督を始めとした狙いなのかと思うと途端に合点がいく。もしかしたら、それ以上に「キーワードだけおいておけばファンの側が勝手に深読みして話を補完していく」と思っているのかもしれん。なんちゃら補完計画の本質はここにあったのか!!! というオチかもしれん。

 

 そう、その「かもしれない」がこの映画の正体の一つなんじゃないか。

 

 そうでも思わなければ、果たしてエヴァという世界観をあまり知らずに「話題だから見てみようか」というこれからこの世界を知っていこうという人には、敷居があまりにも高すぎる。そんな「深読みと思考の迷宮に漂う行為」そのものを楽しめる人でなければ、敷居をまたぐ必要はないですよと。大多数に話題をもたらす必要はなくて、あくまで作り手と受け手たる「古参の追っかけ」とのガチンコ勝負。だから「よくわからない」人は最初から相手にしていない。そうした人たちの評価など、存在しないに等しい。ただひたすら、四半世紀もの時間を「エヴァに呪われた」人々の時計を進めるためだけの映画。そうして「ありえたかもしれない世界」を提示する。それだけ見ればよくある「世界線」ものかもしれないが、社会現象という過去の錘を巻き付けたからこそあらゆるしがらみをなぎ倒し、監督の「ハイ、もう終わり!!!」という決着を否応なく突きつける。

 

 ついてこられるかは別として、監督の四半世紀に及ぶ葛藤の回収、という点では結構なんだけど、終盤「どうしてここで特撮セットとかいろいろ持ってきた?」という唐突さが出てくるし、過去作のオマージュを引き出してすべてを総括した伏線回収になるわけで、エヴァを知らない人にとってはほんとに「???」としかならん。かろうじてTVシリーズをリアルタイムで見ていた俺でも「ここはあのシーンに引っ掛けてる...んだよな?」と答え合わせをし始めると話があまり頭に入ってこない。それはそれで一つの仕掛けなんだろうけど、だからこそ何度も視聴して答え合わせをする人たちが出てくるんだろうけどね。

 

 まあ、色んな人が「これで完結した」と思えるのだろうし、俺も「ここまで回収できたらいいんじゃないの」とは思える。偉そうに言えるほどエヴァに傾倒していたわけじゃないが、少なくとも監督の不完全燃焼はある程度決着がついただろうし、四半世紀待たされたファンもひとまずの心の区切りがついただろうし、そういう意味では「いい映画」だったんだろうな。

 ただ、何回も見たいかといえば、否。やっぱグロい。

 というわけで、グダグダ書いてきたけど「エンターテイメント」としての映像クオリティは最高水準ですよ、とだけは書いときます。その分生生しいシーンはよりグロいのでそうした耐性がない人はエヴァ全般やめときなと。

 

 さらば、すべてのエヴァンゲリオン論争。

 


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