少年時代
少しだけ早く起きた遅番前の朝。空は青空、風は北風。秋の気配で少し寒いくらいの空気。
・少年時代
こんな日に自転車に乗らないのは勿体無いと思い、近場でも流してくるかと9時過ぎに家をでる。とは言え仕事に差し支えないよう、無理な長距離は走らない。本当に近場のみ。気合を入れてロングライド、ではなく近くのコンビニでも気軽に自転車で行く生活の方が俺の理想に近いからね。
北風を背中に受けて、巡航速度は35km/h近く。なかなかに快調だが帰りを考えると少し憂鬱。そんなに大きくないこの街の、端から端までに近い距離を走る。とは言え北海道の地方都市、10キロもない程度。
平日の朝、出勤・通学ラッシュも終わった時間なので、車もそこまで渋滞しているわけでもなく。少し坂を登った上にある図書館まで。ロータリーを回ってすぐに坂を降りる。強風で折れたのか道路に木の枝が落ちていて、一瞬焦るもとりあえずダメージなく通過。来た道を戻り始めたため、下り坂とはいえ体が浮くほどの向かい風。路地に入って風を避けようとした時。
不意に少し開けた道に入る。
ああ、そういえばここは神社の近くだったな。
神社の入り口にbd-1を停め、石段を登り参拝することにする。地元の神社できちんと参拝するというのはそういえばやったことがないなぁと思い。
手水で手と口を清め、鳥居をくぐり本殿へ。賽銭を入れ、鈴がないので鳴らすのは省略、二礼二拍手一礼でお祈り。こんな感じで良かったかな。
地元の神社祭りの準備が進んでいるようで、そこかしこでブルーシートやら幟やらが準備されている。ふと、最後にこの街のお祭りに来たのはいつだろうと思ってみる。
多分、大学時代にバイトで屋台の売り子に駆り出されたのが最後か。それとも覚えてないだけでフラッと屋台の食べ物を買いに来たことがあっただろうか。
鮮明に覚えている記憶をたどりながら歩く。
ああ、そういえばこの演芸舞台を見に、母方の爺ちゃんと来たなぁ。俺は小学生でちっともわからなかった。今も同じ場所でやるんだな。今は90を過ぎた母方の婆ちゃんと一緒に見に来てたっけ。
いつも「拾参、なんか食うか?」「どら焼き食うか?」と可愛がってくれた爺ちゃん。亡くなったのは俺が20の頃。もう18年も前になるのか。その年は、ガンが末期まで進行しててお祭りに来られなかったんだっけ。その時期に俺の運転する車で病院に連れて行って、来年はお祭りにおいでよと励ましてたか。
結局、その1か月後に亡くなった。ずっと手帳につけていた日記の最後の日、俺が車で病院まで乗せていったことが書かれていた。そんな爺ちゃん。
あの神社に行くと、そんなことが思い出されて参道を歩きながら少し泣いた。
嫁は人混みが苦手だからきっと行くことはないんだろうけど、そういう場所で雰囲気を味わうのも俺は嫌いじゃないんだな。いつか行けるといいな。